「不登校・日本語指導」が前提の教室づくり。次期改訂が示すEquity(公正)への転換

こんなこと、感じたことはありませんか?

  • 不登校の子、日本語指導が必要な子への対応に、正解が見えない
  • 「みんな大切にしたい」と思うほど、クラス運営が苦しくなる
  • 公平にしているつもりなのに、誰かが取り残されている気がする

もしかしたら、あなたも今、そんな葛藤の中にいるかもしれません。
わたしも長く学校現場と大学で先生方と関わる中で、「みんな同じ」を目指す善意が、かえって子どもや先生を追い込んでしまう場面を見てきました。
不登校や日本語指導が必要な子が"特別"なのではなく、そうした多様性があること自体が、すでに学校の前提になっています。

次期学習指導要領(2030年度から順次実施予定)では、「多様性の包摂(Equity/公正)」が基本方針の一つとして明確に位置づけられました。
これは、すべての子どもに学びの機会を保障し、個々の多様性を課題ではなく「個人や社会の力」に変える視点です。

この記事では、「Equality(平等)」から「Equity(公正)」へと視点を切り替える教室づくりを考えます。

配慮を増やす話ではありません。
クラス運営の前提を変える話です。

1.Point:「みんな同じ」から離れたとき、教室はようやく現実に追いつきます

結論からお伝えします。

これからの教室づくりは、「みんな同じにする」ことを目標にしない。
不登校や日本語指導が必要な子どもがいる前提で設計する。
その転換こそが、Equity(公正)への第一歩です。

配慮を増やす話ではありません。
特別支援を一部の子に足す話でもありません。
教室運営の「標準設定」を変える話です。

不登校や外国籍の子どもが増えている現実は、一時的な例外ではありません。
もう、教室の「日常」になっています。

次期学習指導要領では、こうした現実を踏まえ、不登校児童生徒に対する「特別の教育課程」の新設が検討されています。
これは校内外の教育支援センターで指導を受ける子どもたちに対し、一人ひとりの状況に応じた柔軟な学びを制度として保障するものです。

つまり、不登校や多様な背景をもつ子どもへの対応は、もはや「配慮」や「特別対応」ではなく、学習指導要領レベルで想定された「標準的な教育課程の選択肢」になろうとしています。

2.Reason:なぜ今、Equityへの転換が避けられないのか

理由① 不登校は「一部の子」の問題ではなくなっている

わたしが学校現場を見る中で、不登校の増加ははっきりと実感しています。
特定の学校や地域に限った話ではありません。
「理由が分からない不登校」
「教室には戻れないが、学びたい気持ちはある子」
こうした子どもが確実に増えています。

実際、小・中学校の不登校児童生徒数は12年連続で増加し、令和6年度(2024年度)には約35万4千人と過去最多となりました。
中学校ではクラスに2〜3人程度は不登校生徒が存在する計算です。

それでも教室運営の前提が「毎日、全員が同じ場所で学ぶ」のままだと、ズレは広がる一方です。
先生方が苦しくなるのは、無理もありません。
こうした現実を受け、次期改訂では不登校児童生徒に対する「特別の教育課程」を新設する方向で検討が進んでいます。
これは、休み始めや回復途上の子も含め、一人ひとりの状況に応じた学習計画を作り、柔軟に評価する仕組みです。

理由② 外国籍・日本語指導が必要な子どもが確実に増えている

外国籍の子ども、日本語指導が必要な子どもも、多くの学校で珍しくなくなりました。
わたし自身、現場を見るたびに「これはもう前提条件だ」と感じています。

にもかかわらず、授業や評価は「日本語母語話者」を基準に設計されている。
この構造が、子どもだけでなく、担任の先生を追い込んでいます。

次期改訂では、日本語指導が必要な児童生徒に対する特別の教育課程も充実する方向です。
現状でも特別の教育課程は存在しますが、さらに個に応じた柔軟な対応が可能になるよう、制度面での拡充が検討されています。

理由③ 「平等に扱う」善意が、逆に不公平を生むから

全員に同じ課題、同じ説明、同じ評価基準。

一見、公平に見えます。
けれど、スタートラインが違う子どもにとっては、それは公平ではありません。

次期改訂の論点整理では、多様性の包摂を「個々の児童生徒の多様な個性や特性、背景に応じた教育を実施し、その多様性を課題ではなく個人や社会の力に変える視点」と定義しています。

Equity(公正)とは、同じゴールを目指すために、必要な支えを変えるという考え方です。
ここを押さえない限り、支援は場当たり的になってしまいます。

3.Example:不登校特例校の知見を一般校にどう生かすか

具体例① 「出席」を前提にしない学びの設計

不登校特例校(学びの多様化学校)では、「毎日登校できるか」を前提にしません。
学びへのアクセスを複線化しています。
・対面
・オンライン
・個別対応

この考え方は、一般校でも応用できます。

次期改訂で検討されている不登校児童生徒向けの「特別の教育課程」では、以下のような柔軟な対応が可能になる方向です

  • 一部教科のみ特別課程で行うことも可能
  • オンラインでの学習も認める
  • 下学年の学び直しも含める
  • 各自の状況に応じた活動を教科学習と組み合わせる

これらは不登校特例校で蓄積されてきた知見を、一般校でも活用できるようにする動きです。

全員に同じ形を求めない。
それだけで、担任の心理的負担は大きく下がります。

具体例② 日本語力ではなく「理解」を見る評価への転換

日本語指導が必要な子どもにとって、言語は壁になります。
しかし、理解まで否定される必要はありません。

図、ジェスチャー、母語、ICT。
手段を柔軟にすることで、「分かっていること」は見えてきます。

不登校特例校では、評価の視点を一つに固定しません。
この姿勢は、一般校でも十分に参考になります。

具体例③ 担任一人で抱えない「チーム前提」の教室づくり

特例校の多くは、最初からチームで動く設計になっています。
担任がすべて背負わない。
一般校でも、特別支援担当、日本語指導担当、管理職、外部機関。
つながりを前提にすると、支援は「特別対応」ではなく「日常業務」になります。

次期改訂の論点整理では、「学校として編成する教育課程の柔軟化」と「個々の児童生徒に着目した特例」を「2階建て」で複層的に包摂する仕組みが提案されています。

つまり、担任一人がすべてを背負うのではなく、学校全体の仕組みとして多様性に対応する設計が、制度レベルで想定されているのです。

4.Point:Equityは、先生を守る考え方でもあります

もう一度、要点を確認します。

Equityへの転換は、子どものためだけの話ではありません。
担任の先生が「どうしていいか分からない」「自分の力不足だ」と一人で抱え込まないための視点です。

前提を変える。
それだけで、支援は整理されます。

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