子どもが変わるのは“やり方”より“予測と準備”:トラブルを減らす環境調整のコツ」

- 毎日、授業は始まる前から慌ただしい。
- 掃除になると途端に騒がしくなる。
- 給食、移動教室、係活動——落ち着かない場面が多すぎて、注意ばかりの日々になってしまう。
そんな経験をしている新任の先生は少なくないと思います。
わたしも長く学校現場を見てきましたが、問題が起きやすい場面には共通点があります。
それは、“何をすればいいかが見えにくい状況”が多いということです。
子どもにやる気がないのでも、わざと騒いでいるのでもなく、行動の見通しがないと不安や混乱が行動として現れることがあります。
ポジティブ行動支援(PBS)の重要な視点は、トラブルを“起きてから対応する”のではなく、“起きないように設計する”ことができるという点です。
やり方を変えるよりも、予測と準備だけでクラスの空気が穏やかになることは珍しくありません。
今日は、授業・掃除・給食などのよく荒れやすい場面を例に、環境調整でトラブルを減らし、子どもが安心して行動できるようにするコツをお伝えします。
結論はシンプルです。
問題行動は“止めるより、起きないようにできる”。
その視点があるだけで、教室の景色は変わり始めます。
1. Point:環境調整、環境づくりが大切
学級の落ち着きは「子どもたちが良い行動をしようとしているかどうか」で決まるのではありません。
行動の見通しがあるかどうか、環境が整っているかどうかで決まります。
授業・掃除・給食・移動など荒れやすい場面は、行動の予測がしづらく、子どもが“どう動けばいいか”を体と心でつかめていないことが多いのです。
だからこそ、教師の役割は「問題行動を止める人」ではなく、“トラブルが起きないように準備できる人”になること。
やり方を注意で矯正するのではなく、安心して行動できる環境をつくること。
この視点があるだけで、教室の落ち着きは大きく変わります。
2. Reason: 起きてからの対応ではなく、起きる前の準備
新任の先生は、問題が起きてからの対応で疲れ切ってしまうことが多いです。
- 「また騒ぎ始めた、どうしよう」
- 「何度注意しても聞いてくれない」
- 「場面が変わった瞬間に落ち着かなくなる」
- 「とにかく1日中“注意”ばかり」
だからこそ、「問題が起きたら止める」ことにエネルギーを使いすぎてしまいます。
しかし、実は学校で起きるトラブルの多くは——対応ではなく準備で解決できます。
心理学的には、行動が乱れやすい場面には共通点があります。
- 何をしていいのか、行動の見通しが持ちにくい
- 正しい順番や動き方が曖昧
- 待ち時間が長い/手持ち無沙汰になる
- 役割や居場所が不明確
- 周囲の刺激が多く、集中しづらい
これらは子どもの意図とは関係なく行動を乱しやすくします。
つまり、問題行動は「性格の問題」でも「反抗心」でもなく、環境とのミスマッチによって生まれることが多いのです。
授業は落ち着くのに掃除で荒れる子がいる。
学級では安心しているのに給食の片付けでトラブルになる子がいる。
これは、「やる気がない子」「態度が悪い子」ではなく、場面ごとの環境適応がうまくいっていない子なのです。
だからこそ、教師が場面を“予測”し、“準備”するだけで、
子どもは安心し、行動が安定しはじめます。
3. Example:未然防止の5つの工夫
ここからは「今日からできる未然防止の工夫」を紹介します。
どれも、追加業務ではなく“場面の設計を少し変えるだけ”で効果が出ます。
① 荒れやすい場面の“予測リスト”を作る
「なぜ荒れるの?」と悩むより、まず荒れやすい場面の予測を先にしてしまうのが近道です。
わたしが多くの学校で見てきた“荒れやすいTOP5”はこうです。
- 授業開始の3分
- 掃除開始の直前と終了直前
- 給食の配膳・片付け
- 移動教室・並ぶ場面
- 席替え・係活動・自由時間
これらはもはやトラブルが起きやすい“前提のある場面”と言ってよいほどです。
まずは反省よりも予測。
予測ができた時点で、もう半分は解決しています。
② “行動のシナリオ”を渡す
やる気を出させるより、動き方を明確にするほうが落ち着きにつながることが多いです。
例:掃除の前に短く伝えるだけ
- ① 教室掃除 → ② 担当場所へ移動 → ③ 雑巾 → ④ 机 → ⑤ 着席の順
- 「終わった人は〇〇の仕事を手伝う。手持ち無沙汰の時間をなくす」
例:給食の片付けの前に短く伝えるだけ
- 「食器→ランチョンマット→机拭き→着席」
- 「流れが止まったら、近くの人を手伝う」
「行動を説明する」のではなく「順番を明確化する」ことがポイントです。
順番があるだけで、落ち着きは想像以上に高まります。
③ “視覚の力”を使う(言葉だけで整えようとしない)
子どもは言葉を聞き逃します。
しかし視覚サインは聞き逃さないのです。
- 黒板に「動きの順番」を図で示す
- トラブルの起きやすい教室の動線に矢印テープ
- 「静かに聞く合図」をイラストで統一
- 席替えの手順を写真で掲示
落ち着きがない子ほど 「視覚サポートの恩恵を受けて落ち着きが増す」特徴があります。
“視覚は支援”という感覚で使うと、劇的な効果が出ます。
④ 待ち時間にタスクを与える
荒れやすい最大の原因のひとつは手持ち無沙汰の時間です。
大人でも“待たされて暇”な時間は落ち着きません。
例:
- プリント配布の間 → 「次のページのタイトルを確認」
- 移動教室の待ち時間 → 「今日の授業のめあてに★を付ける」
- 給食の配膳の列 → 「明日のお楽しみ係のアイデアを考える」
待ち時間を“価値のある時間”に変えるだけで、行動の乱れは大幅に減ります。
⑤ トラブル後の対応は“反省”より“再設計”
トラブルが起きたときの反省会は短くてOKです。
その代わりに環境の再設計を優先します。
例:「掃除が荒れた日」の思考の流れ
×「もっと注意しなきゃ」
〇「次からは班ごとに開始時間を1分ずつずらそう」
〇「役割カードを前に貼って迷いをなくそう」
〇「終わったときの“着地点”を決めておこう」
こうして「注意」ではなく「設計」で改善する文化が生まれます。
4. Point:子どもが見通しが持てることが大切
子どもが落ち着かないのは、努力不足でも反抗でもありません。
“どう動けばいいかの見通しが持てていないだけ”であることが多いのです。
だから、叱る前にできることがあります。
- 荒れる場面を予測する
- 行動の順番を提示する
- 視覚でサインを出す
- 待ち時間をタスク化する
- トラブルは反省より再設計で改善する
これらは完璧にやる必要はありません。
少しの準備が、子どもの安心を生み、行動の安定につながります。
まとめ
新任の先生へ。
毎日、本当に全力で子どもたちに向き合っていること、わたしは知っています。
教室が落ち着かないとき、自分を責めすぎないでください。
うまくいかないのは、あなたが悪いからではなく、場面が子どもにとって“見えにくい”だけかもしれません。
明日の教室で、ほんの少しだけ試してみてください。
- 「順番を板書してから始める」
- 「視覚のサインをひとつだけ使う」
- 「待ち時間にタスクを置いてみる」
それだけで、表情が変わる子がいます。
不安が減る子がいます。
静かに自信を取り戻す子がいます。
そして何より、先生自身の心が軽くなります。
わたしも道半ばです。
一緒に学んでいけたら嬉しいです。
