「伝えたはずなのに」はもう通じない!多様な学級で必須のローコンテクスト会話術

「ちゃんと伝えたはずなのに、子どもたちが動かない」
「あの子にはわかっていると思っていたのに…」
そんな戸惑いを感じたことはありませんか。

今の子どもたちは、かつての世代とは“言葉の受け取り方”が大きく変わっています。
わたしたちが育ってきた時代は、言葉の“行間”や“空気”を読む力が重視されていました。
しかし、SNSやデジタル文化の影響を受けて育った世代は、「言葉にしてもらわないとわからない」文化に移行しています。

これは心理学や文化人類学では「ローコンテクスト・コミュニケーション(=文脈ではなく、言葉そのものではっきり伝える会話)」と呼ばれます。

わたしも長年、若い先生方や子どもたちと関わる中で、行間ではなく「言葉で伝える力」の重要性を痛感してきました。
この記事では、ハイコンテクストな指導(=空気で察する文化)の弊害と、ローコンテクストな伝え方を身につけるための具体的なステップをお伝えします。

「察してくれない」ではなく、「伝わる」に変えるための小さなヒントを、一緒に探っていきましょう。

1.Point:これからの学級づくりには、「察してほしい」ではなく「言葉で伝える力」が欠かせない

現代の学級では、先生の「察してほしい」という思いが伝わらない場面が増えています。
子どもたちは「空気を読む」よりも、「言葉で説明してもらう」ことに慣れています。

つまり、「言葉にしなくても伝わる」時代は終わったということです。

これから必要なのは、ローコンテクスト・コミュニケーション(=あいまいな表現を避け、5W1Hで具体的に伝える会話)です。
「察してもらう」よりも「明確に伝える」指導を意識すると、誤解やトラブルが減り、学級の安心感も高まります。

2.Reason:なぜ「空気で伝える」では通じなくなってきたのか

「ちゃんと説明したのに伝わらない」「あの子だけ理解していなかった」──そんな経験はありませんか。
その背景には、文化の変化があります。

日本の社会は長く、ハイコンテクスト文化(=言葉よりも状況や空気、関係性で理解し合う文化)に支えられてきました。
「相手の気持ちを察する」「行間を読む」という力が美徳とされ、学校現場でも「言わなくてもわかる」が当たり前でした。
しかし、ここ10年ほどで、子どもたちのコミュニケーション環境は大きく変わりました。

SNSやオンラインゲームなど、短いメッセージのやり取りが主流となり、文脈よりも明確な言葉が重視される時代へと移行しています。
つまり、子どもたちは「言われないとわからない」のではなく、「言葉で伝えてもらうことに慣れている」だけなのです。

一方で、多くの先生方は自分の育った時代の感覚のまま、ハイコンテクストな指導スタイルを続けています。
たとえば、次のような場面に心当たりはありませんか。

  • 「このくらい言わなくても分かるよね」と思っていたが伝わっていなかった
  • 「周りが見えていない」と叱ったが、子どもは何が悪いのか分かっていなかった
  • 「みんなと同じように動いて」と言ったが、“同じように”の意味が人によって違っていた

これらは、指示の曖昧さが原因です。
悪意でも反抗でもなく、ただ「情報が足りない」だけ。
その結果、先生は「伝えたのに」と感じ、子どもは「ちゃんと聞いたのに分からない」とすれ違ってしまうのです。

心理学的に言えば、ハイコンテクスト文化は“共有された前提”の上に成り立ちます。
しかし、多様化が進む現代の学級では、家庭背景・文化・発達特性もさまざま。
「前提が違う子どもたち」に、暗黙の了解だけで伝えるのは、もはや難しい時代なのです。

3.Example:行間ではなく、具体的に伝えるローコンテクスト指導の実践

では、どのように伝えればよいのでしょうか。
ポイントは、「説明を丁寧にする」ではなく、「構造的に伝える」ことです。
具体的には、5W1H(When, Where, Who, What, Why, How)を意識して言葉にするだけで、驚くほど伝わり方が変わります。

「何を」「いつまでに」「どうしてほしいか」を明確にする

たとえば、
 ✕「ちゃんと準備しておいてね」
 〇「明日の1時間目までに、理科のプリントを3枚ノートに貼っておいてください」
これだけで、子どもの行動が変わります。

抽象語を避け、具体的な行動で示す

 ✕「しっかりやろう」
 〇「音を立てずに、3分間で机の上を片づけよう」
曖昧な言葉ほど、受け取り方が人によって違います。
「行動でイメージできる言葉」に置き換えることが大切です。

「できた状態」を一緒に確認する

「これが“準備ができた状態”だよ」と見せることで、基準を共有できます。
曖昧な「いい感じ」「まあまあ」ではなく、視覚的・具体的な形で共通理解をつくります。

「なぜそれをするのか」を添える

子どもたちは“納得”が行動のエネルギーになります。
「急がせたい」よりも、「このあとすぐ実験を始められるようにね」と理由を添えるだけで、協力する姿勢が変わります。

フィードバックもローコンテクストに

成果を伝えるときも、「よかったね」だけで終わらず、
「時間を守って取り組めたね」「友達の話を最後まで聞けたね」と具体的に言葉にすることで、
子どもは“何が良かったのか”を理解し、再現できるようになります。

実践事例①:「“察して”をやめたら、関係が近づいた」

ある新任の先生が、クラスの子どもたちとの距離に悩んでいました。
「一生懸命説明しているのに、子どもたちがピンとこない」と感じていたそうです。
そこで、「何を・どんなふうに・どうしてほしいのか」をすべて言葉にして伝えることにしました。

「早くして」ではなく「あと1分で掃除を終えよう」、
「静かにして」ではなく「声を出さずに3人で確認しよう」。
すると、子どもたちは次第に動きやすくなり、指示を出す回数も減りました。
先生自身も「察してほしい」というストレスから解放され、笑顔が増えたと言います。

実践事例②:保護者や職員室でも「伝え方」を意識すると信頼が深まる

ローコンテクストな伝え方は、子どもだけでなく、大人同士にも有効です。
保護者への連絡では、「近いうちに」よりも「金曜日までに提出をお願いします」と期限を明確に。
職員室でも、「お願いしておきます」より「この部分を明日までに確認してもらえますか」と依頼の範囲を具体化する。
これだけで、誤解や行き違いが減り、協働の雰囲気が生まれます。

伝わる言葉は、信頼をつくります。
そして、その信頼が、子どもたちにとって安心できる環境につながるのです。

4.Point:伝わる言葉で、安心できる学級をつくる

「察してほしい」と思う気持ちは、先生の優しさから生まれるものです。
でも、伝わらなければ、その優しさは届きません。

ローコンテクスト・コミュニケーション(=はっきりと言葉にして伝える会話)は、冷たさではなく、思いやりの形です。
誰も置き去りにしないために、明確に伝える。
それが、多様な子どもたちが共に学ぶ今の時代に必要なスキルです。

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