通知表はどう変わる?「学びに向かう力・人間性等」を評価することの難しさと意義

こんなこと、感じたことはありませんか?

  • 評定は出せるが、本当にそれでいいのか迷いが残る
  • 「人間性」や「志」をどう見取ればいいのか分からない
  • 数値にできない学びを、通知表にどう書けばいいのか悩む

もしかしたら、あなたも今、成績処理の画面を前にして、そんな立ち止まり方をしているかもしれません。
わたしも学校現場や大学で先生方と関わる中で、「評価が一番しんどい」という声を、何度も聞いてきました。

実は、2025年7月、文部科学省は大きな方針転換を示しました。
次期学習指導要領(2030年度から順次実施予定)では、「主体的に学習に取り組む態度」を評定(5段階・3段階の数値)に入れない方針が示されたのです。
これは、「態度を数値化することの限界」と「評価が本来果たすべき役割」を見直す動きです。
次期学習指導要領が強調しているのは、知識・技能の到達度だけでなく、学んだことを社会や自分の生き方にどう結びつけようとしているか、そのプロセスとしての「学びに向かう力・人間性等」です。

この記事では、評価の何が変わり、何が変わらないのか。
「学びに向かう力・人間性等」を評価することの難しさを正面から捉えつつ、今、国や研究の場でどのような議論が進んでいるのかを整理します。

点数化の話ではありません。見取り方と、言葉によるフィードバックの話です。
評価が少し怖くなくなり、子どもの姿を言葉にする視点が増える。
そんなヒントを、ここから一緒に探っていけたらと思います。

1.Point:評価は「測る」から「意味づける」段階へ移っています

結論からお伝えします。

次期学習指導要領が示している評価の転換点は、「学びに向かう力・人間性等」を数値で測ろうとすることをやめることです。

2025年7月、文部科学省は中央教育審議会の議論を受け、次期改訂では「主体的に学習に取り組む態度」を評定(5や3などの数値)に入れない方針を示しました。
これは、評価を軽視するということではありません。
むしろ、数値では捉えきれない学びの本質を、より丁寧に見取るための転換です。

「学びに向かう力・人間性等」は、観点別評価として残ります。
しかし、その評価は個人内評価として、教育課程全体を通じて記述的に行う方向性が検討されています。
つまり、他者と比較した数値ではなく、その子の成長の過程を言葉で記録する評価へと変わっていきます。

数値化しにくい部分を、無理に点に置き換える必要はありません。
むしろ、数値ではこぼれ落ちてきた学びに意味を与えることが、これからの評価の役割になります。

通知表は、序列をつくるための道具から、学びを社会や人生につなぐための対話の入り口へと変わりつつあります。

2.Reason:なぜ「学びに向かう力・人間性等」の評価方法が見直されるのか

Reason①:「態度」を数値化することへの限界が明らかになった

現行の学習指導要領では、「主体的に学習に取り組む態度」を「粘り強さ」と「学習の自己調整」の2つの側面から評価してきました。
しかし、現場からは次のような声が上がっていました。

  • 真面目に取り組んでいるが、表に出にくい子をどう評価するのか
  • 発言は多いが、学びが浅い子をどう見るのか
  • ノート提出や締切遵守で評価することが、本当に「主体性」なのか

単純な数値化では、子どもの学びの姿を歪めてしまう。
この実感が、評価方法の見直しを後押ししています。

理由②:知識・技能だけでは、学びの価値を語りきれなくなっている

知識や技能の到達度は、これまで以上に可視化できるようになりました。
テスト、データ、AI。

一方で、「それを何のために使おうとしているのか」「どんな場面で生かそうとしているのか」は、数値では捉えにくい。
社会が複雑になるほど、学びを自分の生き方や社会とどう結びつけるかという視点の重要性が増しています。

次期改訂では、この部分を個人内評価として丁寧に見取る方針が示されています。

理由③:評価が「子どもの未来への向き方」と結びつく段階に来ている

次期指導要領で語られている「学びに向かう力・人間性等」の4つの要素は以下です。

  • 初発の思考や行動を起こす力・好奇心
  • 学びの主体的な調整
  • 他者との対話や協働
  • 学びを方向付ける人間性

これらは、性格を評価することではありません。
学びを、自分や社会とどう結びつけようとしているか。
つまり、未来への向き方です。

評価は、子どもにとっての「鏡」になります。
だからこそ、慎重さと意義の両方が問われています。

3.Example:数値に頼らず「学びに向かう力・人間性等」を見取る具体的な視点

具体例① 結果ではなく「選択の理由」に目を向ける

「正解したか」「できたか」ではなく、「なぜ、その方法を選んだのか」。

  • 課題への取り組み方
  • 資料の使い方
  • 他者の意見との向き合い方

ここに、その子なりの価値観や志向が現れます。
評価は、その選択を言葉にして返すことから始まります。

 例(中学理科): 「実験の方法を選ぶとき、Aさんは『全員が理解できる方法』を優先していた。協働を重視する姿勢が見られる」

具体例② 振り返りの言葉を「評価の素材」として扱う

振り返りは、感想を書く時間ではありません。
学びをどう意味づけているかを知る手がかりです。

  • 何が印象に残ったか
  • どんな場面で役立ちそうか
  • 次は何を工夫したいか

この言葉の変化を追うことで、学びに向かう力の成長が見えてきます。

例(小学校国語):
 単元前:「物語が面白かった」
 単元後:「登場人物の気持ちが、描写から読み取れるようになった。次は他の物語でも試したい」
  → 学びの意味づけが深まっている様子を記録。

具体例③ 評価を「確定」ではなく「途中経過」として返す

学びに向かう力・人間性等は、固定されるものではありません。
揺れ、変わり、育っていくものです。
だからこそ、評価も断定しない。「今は、こう見えている」と返す。
この姿勢が、評価を支援に変えていきます。

  記述例: 「グループ活動では、自分の意見を伝えることに少しずつ積極的になってきています。友達の考えを聞く姿勢も育 っています」
  → 成長の過程を肯定的に記録。

4.Point:評価は、教師の価値観を押しつけるためのものではありません

もう一度、確認します。

「学びに向かう力・人間性等」を評価するとは、理想像に近づけることではありません。
子どもが、自分の学びをどう捉えているかを一緒に言葉にすることです。

次期改訂で示された方針は、個人内評価として、その子の成長の過程を記述的に評価することです。
他者との比較ではなく、その子なりの変化や深まりを丁寧に見取る。
評価は、教師の判断で終わるものではなく、対話の始まりになります。

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