「情報」は教科の壁を越えるか?全教科で取り組む情報活用能力の育成

1.Point:「情報活用能力」は、特定教科の仕事ではありません

結論からお伝えします。

情報活用能力は、情報科やプログラミングの専売特許ではありません。
国語でも、数学でも、理科でも、社会でも、すでに日々の授業の中で育てることができます。
ポイントは、「ICTを使うかどうか」ではなく、「情報をどう扱わせているか」という視点です。

情報活用能力とは、集める・比べる・疑う・選ぶ・表現する。
こうした思考のプロセスそのものです。
教科の中核に、すでに含まれている力だと捉え直すことが出発点になります。

次期学習指導要領では、情報活用能力を「主体的・対話的で深い学び」を支える基礎的資質として明確に位置づけています。
つまり、ICTの活用スキルではなく、情報を使って考え、判断し、表現する力そのものが、すべての教科での深い学びを支える基盤だということです。

2.Reason:なぜ「全教科で」情報活用能力なのか

理由① 生徒は、教科を分けて情報を扱っていないから

現実の社会では、「これは国語の情報」「これは理科の情報」そんな区別は存在しません。
ニュース、SNS、データ、映像。
生徒は、日常的に複数の情報を行き来しています。
学校だけが、教科ごとに情報を分断している。
このズレが、学びを形式的なものにしています。
だからこそ、どの教科でも「情報の扱い方」を問う必要があります。

理由② プログラミングや情報モラルだけでは不十分だから

プログラミング教育や情報モラルは重要です。
ただ、それだけでは「情報を使って考える力」にはつながりにくい。

情報活用能力は、正解を出す力ではありません。
根拠を吟味し、判断を保留し、別の可能性を考える力です。
これは、日々の教科学習の中でこそ育ちます。

次期改訂では、この認識がより明確になります。
小学校の「総合的な学習の時間」に「情報の領域(仮称)」を設けることで、情報活用能力を体系的に育成する時間が確保されます。
ただし、これは「総合の時間だけで完結する」という意味ではありません。
総合で育んだ情報活用能力を、各教科での探究的な学びを支え、駆動させることが狙いです。
つまり、各教科こそが情報活用能力を実際に発揮する場なのです。

理由③ 教科の学びを深める"共通言語"になるから

情報活用能力を意識すると、教科の問いが変わります。

「何が書いてあるか」から「どの情報を、どう使ったか」へ。

この問いは、全教科に共通します。
教科横断は、新しい活動を増やすことではありません。
問いの質をそろえることです。

次期改訂では、情報活用能力を基盤として探究的な学びを一層進めることが盛り込まれています。
「情報をどう扱うか」という視点は、国語でも数学でも理科でも社会でも共通する問いです。
この共通言語があることで、教科を越えた学びのつながりが見えてきます。

※次期学習指導要領では、情報活用能力の育成が大きく強化されます
■小学校
・「総合的な学習の時間」に「情報の領域(仮称)」を新設
・情報活用能力の基礎を体系的に学ぶ時間を確保
・ただし、各教科で活用することが前提
■中学校
・「技術・家庭科」を分離
・「情報・技術科(仮称)」として情報教育を独立
・生成AI、データ処理、情報セキュリティなどを学ぶ
■高校
・小中とのつながりを踏まえた「情報」教育の充実

これらは、情報活用能力が「特定教科の仕事」から「全教科を貫く基盤」へと明確に転換することを示しています。

3.Example:既存教科での具体的な育て方

次期改訂で小学校に設けられる「情報の領域(仮称)」では、情報活用能力の基礎を体系的に学びます。
しかし、それを実際に活用するのは各教科での学びです。
以下では、既存教科の中で、どのように情報活用能力を育てられるかを考えてみましょう。

具体例① 国語:「内容理解」から「情報の信頼性」へ

説明文や評論文の授業では、筆者の主張を押さえることが中心になります。
一歩踏み込むなら、
・どんな情報が使われているか
・事実と意見はどう区別されているか
・別の資料があれば主張は変わるか
こうした問いを入れるだけで、情報活用の視点が加わります。
ICTを使わなくても、十分に可能です。
こうした視点は、次期改訂で重視される「情報の信頼性や妥当性の吟味」という資質・能力とも直結します。

具体例② 数学・理科:「計算・実験」から「データの解釈」へ

数学や理科では、グラフや表、実験結果を扱います。
ここで問いたいのは、「正しいかどうか」だけではありません。
・どのデータを使ったのか
・見せ方で印象は変わらないか
・外れ値をどう扱うか
データをどう読むかは、立派な情報活用能力です。
次期改訂では、中学校で「情報・技術科(仮称)」が創設され、データ処理やAI、情報セキュリティなどを学びます。
しかし、データを読む力は数学や理科の授業でこそ実践的に育ちます。
専門教科と各教科が相互に支え合う関係です。

具体例③ 社会:「知識習得」から「情報の立場性」へ

社会科は、情報の宝庫です。
資料、統計、地図、史料。
問いを「覚えたか」から「誰の立場の情報か」へ移す。
すると、批判的に情報を見る力が育ちます。
これは、情報モラルとも自然につながります。

4.Point:教科の中身を削らず、視点を足すだけでいい

もう一度、大切な点を確認します。

情報活用能力は、授業に新しい活動を足す話ではありません。
今ある教材、今ある問いを、「情報の扱い」という視点で少し言い換えるだけです。

教科の専門性を弱めることはありません。
むしろ、教科の学びを深める「補助線」になります。

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