「主体的・対話的で深い学び」のその先へ。形で終わらせない「深い学び」の正体

こんなこと、感じたことはありませんか?
- ペアワークは入れているが、学びが深まっている実感がない
- 話し合いが盛り上がっても、結局「何を理解したのか」が曖昧
- アクティブ・ラーニングはやっているのに、評価に自信がもてない
もしかしたら、あなたも今、そんなもどかしさを抱えているかもしれません。
わたしも長年、学校現場にいて、「形はあるのに中身が残らない授業」を何度も行ってきました。
大学で教員養成に関わり、現場の先生方と対話を重ねる中で、次期改訂で重視される「中核的な概念(ビッグアイデア)」こそが、「主体的・対話的で深い学び」を実装する鍵だと確信しています。
この記事では、対話を"活動"で終わらせず、学びを"理解"へつなげる具体的な視点と事例を紹介します。
授業づくりに一本、芯が通る。そんな感覚を、今日持ち帰ってもらえたらと思います。
1.Point:形だけの対話を超える鍵は「深い学び」を先に描くことです
結論からお伝えします。
「主体的・対話的で深い学び」を本当に実現するために必要なのは、活動の工夫ではありません。
先に「この授業で、子どもにどんな中核的な概念を理解してほしいのか」を教師が言葉にしておくことです。
ペアワークや話し合いが機能しない原因は、教師自身が「到達点」を曖昧にしたまま授業を組み立てている点にあります。
次期改訂で重視される「中核的な概念(ビッグアイデア)」とは、単元や教科を貫く"意味の芯"であり、個別の知識を超えて、社会や生活で生きて働く、より大きなレベルの理解です。
深い学びは、偶然には生まれません。
設計された対話の先に、必然として立ち上がるものです。
一緒に、その設計の視点を整理してみましょう。
※「中核的な概念」とは何か
次期改訂に向けた議論では、「中核的な概念」を「入試等のあと、断片的な知識・技能が一定程度失われても残るもの」とも表現しています。つまり、テストが終わって細かい用語を忘れても、「要はこういうことだったな」と残る理解のことです。次期改訂では、1コマ1コマの授業ではなく「単元」という長い実践スパンで、社会につながる課題にじっくりと取り組む授業をデザインすることが重視されています。中核的な概念を軸にすることで、教師が単元づくりの自由度を実感しながら、本質的な問いについて追究する学びを生み出せることが期待されています。
2.Reason:「活動はあるのに学びが残らない」授業が増えてしまう理由
次期学習指導要領では、「主体的・対話的で深い学び」の実装が基本方針の一つとして掲げられています。
現行指導要領の枠組みは妥当なものの、現場では「スローガンが多く、関係性が実感を伴って理解しにくい」という声も上がっています。
そこで次期改訂では、「中核的な概念」を軸に内容を構造化し、分かりやすく使いやすい学習指導要領を目指す方向性が示されています。
教室はにぎやかで、ワークシートも埋まっている。
けれど、授業後に「何が分かった?」と聞くと、返ってくる答えが表層的……。
これは先生の力量不足ではなく、構造的な問題です。
①「何をさせるか(活動)」が主役になっている
現行指導要領の普及により、「話し合わせること」自体が目的化し、「何を理解させるか」が後回しになる逆転現象が起きています。
活動がゴールになると、理解は"子ども任せ"の運任せになってしまいます。
②「個別的な知識の習得」と「中核的な概念の理解」を混同している
単なる個別的知識(用語や公式、事実)の暗記だけでは、学びは深まりません。
次期改訂では、より大きなレベルの「中核的な概念」—つまり「なぜそうなるのか?」「他でも使えるか?」という考え方そのもの—を理解することが重視されています。
この「中核的な概念」を軸にせずに活動を積み重ねても、バラバラの知識が残るだけで終わってしまいます。
ここが定まれば、対話の質は自然と変わっていきます。
3.Example:概念的理解を軸にした授業づくりの具体像
では、具体的にどう設計すればよいのでしょうか。ポイントを3つに凝縮しました。
(1)単元の終わりに残したい「一文」を先に決める
例えば国語の物語文で「登場人物の気持ちを考えよう」を、「人はどんなときに、自分でも気づかない感情を行動に表すのか」という一文に昇華させます。
これが授業の背骨となる「中核的な概念(ビッグアイデア)」です
(2)対話を「考えを揺さぶる装置」として使う
「一文」が決まれば、ペアワークの目的が変わります。
単なる感想の言い合いではなく、「なぜこの行動をとったのか?」と根拠を突き合わせる中で、自分の考え方を点検し、深い納得感へと導きます。
(3)評価の視点を「量」から「変容」へシフトする
概念的理解を軸にすると、「前より理由を多角的に説明できている」といった考え方の深まりが評価できるようになります。
これは、教師自身の「これでいいんだ」という安心感にもつながります。
以前関わった若手の先生も、「この一文」を決めたことで問いかけが劇的に変わり、「話し合いが、初めて自分のものになった」と手応えを語ってくれました。
4.Point:深い学びは、教師の「問いの覚悟」から始まります
もう一度、結論を確認します。
「主体的・対話的で深い学び」の実装は、活動の多さでは決まりません。
教師が「この授業で、何を理解してほしいのか」を中核的な概念のレベルで引き受けているかどうかです。
完璧なビッグアイデアでなくて構いません。
迷いながら、言葉にしてみることが大切です。
その姿勢が、授業に一本の軸を通します。
深い学びは、子どもだけの仕事ではありません。
教師自身が学び続ける過程の中で、少しずつ形になっていくものだと思います。
まとめ:対話を「意味のある時間」に変えるために
もし今、「形はやっているのに、手応えがない」と感じているなら、活動を増やす前に、立ち止まってみてください。
この単元で、子どもに残したい一文は何か。
その問いを、ぜひ書き出してみてください。
わたしも、いつも道半ばです。
一緒に考え、試しながら、授業を少しずつ育てていけたら嬉しいです。

