学級に蔓延する「どうせ無理」を変える!学級の集団効力感を高める最初のステップ

「どうせ無理」──そんな言葉が、子どもたちの間で当たり前のように交わされていませんか。
- 話し合いをしても意見が出ない
- 何を提案しても「無理」と返される
- がんばる子ほど浮いてしまう
そんな教室の空気に、胸が痛む先生も多いでしょう。
子どもたちの背後には、「どうせ変わらない」「どうせわかりあえない」という集団全体のあきらめが潜んでいます。
これは心理学でいう“集団効力感”が低下した状態です。
個々の努力以前に、「みんなで取り組めば何とかなる」という感覚が失われているのです。
わたしは長年、教育心理学を専門に、先生方と一緒に子どもの変化を支える方法を考えてきました。
どんな学級でも、最初の一歩を丁寧に踏み出せば、空気は少しずつ変わります。
今回は、「どうせ無理」を「きっとできる」に変えるための、集団効力感を高める最初のステップを一緒に考えてみましょう。
1.Point:集団効力感を取り戻すことが、学級を動かすいちばんの鍵
「どうせ無理」という空気が漂う教室には、挑戦するエネルギーが生まれません。
しかしその空気を変える力は、子ども一人の努力や先生の情熱だけではなく、“みんなでできる”という信頼感=集団効力感の中にあります。
集団効力感とは、「この仲間となら何とかなる」という信念です。
この感覚が戻ると、子どもたちは失敗を恐れず挑戦し、支え合い、自然と笑顔が増えます。
大切なのは、目の前の問題を一気に解決しようとすることではなく、小さな成功を丁寧に積み重ね、「できたね」を共有する日常を取り戻すこと。
これが学級再生の第一歩です。
2.Reason:なぜ「どうせ無理」という空気が生まれ、広がってしまうのか
「このクラス、もう無理かもしれない」──そんな言葉を、あなたも心のどこかでつぶやいたことがあるかもしれません。
長く学校現場を見てきて、わたしは“あきらめの空気”が生まれる瞬間を何度も目にしてきました。
最初は、ほんの小さなつまずきです。
「意見を言ったけど笑われた」「がんばっても評価されなかった」──そんな体験が重なるうちに、子どもたちは学習性無力感に陥ります。
これは心理学でいう「努力しても結果は変わらないという思い込み」。
しかも、無力感は感染します。
一人のあきらめが、次第に友達へ、クラス全体へと広がっていくのです。
ある小学校でのこと。
発表のたびに沈黙が続き、教師が問いかけても誰も手を挙げませんでした。
子どもたちに理由を聞くと、「間違えたら笑われるから」「どうせ同じ子が答える」という声が返ってきました。
つまり、失敗を避ける“安全な沈黙”がクラスのルールになっていたのです。
この状態が続くと、集団効力感はどんどん下がります。
なぜなら、「わたしたちならやれる」という信頼が生まれないからです。
先生も疲れます。
努力しても変わらないと感じると、無意識のうちに表情が硬くなり、声のトーンも落ちます。
すると子どもたちはさらに「先生も諦めてる」と感じ、関係は遠のいていきます。
この悪循環を断ち切るには、「努力すれば少し変わる」という体験を、みんなで共有することが不可欠です。
心理学の研究でも、集団効力感は自己効力感(個人の自信)よりも、行動変化を強く促すと示されています。
つまり、「自分ひとりでは無理でも、みんなとならいける」という感覚が行動の原動力になる。
だからこそ、先生が最初にすべきは、「集団としての小さな成功」を演出することなのです。
3.Example:小さな成功を“仲間と共有する仕組み”をつくる
では、具体的にどうすればよいでしょうか。
ポイントは、「成功の共有」→「信頼の実感」→「挑戦への意欲」という流れを、日常の中に埋め込むことです。
① 1日1回、「できた」を見つけて言葉にする
どんなに忙しい日でも、「今日はここがうまくいったね」と言葉にする時間をつくります。
たとえば「全員で最後まで話し合えたね」「意見が重なった瞬間があったね」など、成果を具体的に言語化することが大切です。
この“言葉にする”行為が、子どもたちに「努力は意味がある」と伝えます。
② 成功の主語を「わたし」ではなく「わたしたち」に
教師が「みんなでできたね」と言うだけで、メッセージの受け取り方は大きく変わります。
個人の称賛ではなく、集団としての成長を評価することで、子どもたちは「自分は仲間の一員だ」と実感します。
③ 目標は“低く・明確に・一緒に決める”
「みんなで意見を3つ出そう」「時間内に協力して片づけよう」など、小さくてすぐ達成できる目標を立てましょう。
高すぎる目標は達成感を奪います。
“みんなでできた”という成功体験を積み重ねることが、やがて“きっとできる”という信頼を生み出します。
④ 成功の瞬間を「見える化」する
黒板の隅や学級通信に「今週のみんなの力」を書き出してみましょう。
「話し合いで最後まであきらめなかった」「声をかけあって準備が早くなった」など、行動を可視化することで、子どもたちは自分たちの成長を目で確かめられます。
⑤ 教師自身が“できた”を共有する
「今日は授業でみんなの話し合いが深まって、わたしも嬉しかった」と、先生自身の感情を伝えてみてください。
教師の笑顔や感謝の言葉が、クラスの心理的安全を高めます。
子どもたちは“先生も仲間なんだ”と感じ、安心して挑戦できるようになります。
事例紹介①:あきらめのクラスが「やればできる」に変わった話
ある中学校2年生のクラス。意見交換をしても沈黙が続き、リーダー的な生徒ほど孤立していきました。
担任の先生は毎朝、「昨日より少し良かったこと」を全員で1つ共有する時間を設けました。
最初は「特にない」と言う生徒が多かったものの、次第に「昨日より笑顔が多かった」「声をかけあえた」と小さな変化を口にするように。
3週間後、学級会で意見を出す子が倍に増え、学級通信には「みんなでやってみよう」という言葉が増えました。
この変化を見て、先生が言いました。
「自分が変えたというより、みんなが変化を信じ始めたんです。」
まさに、集団効力感が戻った瞬間でした。
事例紹介②:管理職の支援で学校全体の空気が変わった話
ある校長先生は、全職員会議の冒頭で「今週の“できた”」を一人ずつ共有する取組を始めました。
最初は「子どもが挨拶できた」「時間通りに授業を始められた」といった小さな話でしたが、半年後には「学年全体で企画を実現できた」と、協働的な話題が増えていきました。
教員同士が互いの努力を認め合う空気ができ、結果的に学校全体の士気が上がりました。
集団効力感は、クラス単位を超えて、職員室や学校文化にも広がります。
大人が“できた”を共有する姿を見せることが、子どもたちへの最高のメッセージになります。
4.Point:信頼は、成功体験の積み重ねから生まれる
クラスの空気を変えるには、説得でも叱咤でもありません。
「できたね」と共に喜ぶ瞬間を重ねること。
その小さな積み重ねが、集団効力感を静かに育てます。
そして何より大切なのは、先生自身が「この子たちはきっと変わる」と信じ続けることです。
その信念こそが、子どもたちの心に伝わり、行動を変える火種になります。
「どうせ無理」ではなく、「みんなでやってみよう」と言える空気をつくる。
それは、特別な才能ではなく、毎日の小さな意識の積み重ねから始まります。
今日の一声、今日の拍手、今日の笑顔が、明日の挑戦を生むのです。
まとめ:今日からできる一歩を、みんなで踏み出そう
「どうせ無理」と感じる瞬間こそ、変化のチャンスです。
クラスの中で、1つでも「できたね」を見つけて、みんなで言葉にしてみてください。
それが、集団効力感を高める最初のステップになります。
焦らず、比べず、信じながら。
わたしも、いつも道半ばです。
先生方の毎日は、本当に尊いものだと思います。
一緒に、子どもたちと“できた”を重ねていきましょう。

