「子どもと一緒につくる学級目標〜押し付けから共創へ〜」(小学校編)

こんな経験、ありませんか?
- 学級目標を考えても、ありきたりな言葉しか浮かばない
- 自分で決めた目標を子どもたちに発表したけれど、反応がいまひとつ
- せっかく立てた目標が、気がつくと教室の壁で色あせている
- 他のクラスの素敵な目標を見て、自分の目標が恥ずかしくなる
わたしも担任をしていた頃、4月になると学級目標に悩まされていました。
「今年はどんな目標にしよう」と一人で考え込み、結局は前年と似たような目標になってしまう。
そんな繰り返しでした。
でも、ある年の4月、子どもたちの何気ない一言から大きな気づきを得ました。
「それって学級の目標?先生の目標?」。
その日から、学級目標への向き合い方が180度変わったのです。
この記事では、若手の先生でも明日から実践できる「子どもと一緒につくる学級目標」の具体的な手法をお伝えします。
難しい理論ではなく、小学生にも分かりやすく、先生自身も「これならできそう」と思える方法です。
子どもたちが本当に大切にしたい目標を一緒に見つけることで、あなたの学級はきっと温かく、活気のある場所に変わっていくはずです。
一人で悩まず、子どもたちと一緒に歩んでみませんか。
1.Point:学級目標は「子どもと一緒につくる」が成功の鍵
学級目標づくりで最も大切なことは、先生が一人で考えるのではなく、子どもたちと一緒につくり上げることです。
多くの若手の先生が「立派な目標を提示しなければ」と思い込んでいますが、実は子どもたち自身の言葉や思いから生まれた目標こそが、一年間を通じて生きた目標になります。
小学生は、自分たちが参加してつくったものに対して強い愛着と責任感を持ちます。
先生から与えられた目標ではなく、「みんなで決めた目標」だからこそ、日々の生活の中で自然と意識し、行動につなげることができるのです。
2.Reason:なぜ「一緒につくる」ことが重要なのか
小学生の発達特性を活かす
小学生は「自分事」として捉えられることに対して、驚くほどの集中力と継続力を発揮します。
6歳から12歳という年齢は、まさに「自分たちで決めたい」「参加したい」という気持ちが強くなる時期です。
わたしがコーチングで関わった多くの小学校の先生方も、同じような悩みを抱えていました。
「目標を決めても、子どもたちが他人事のように感じている」
「目標に向かって頑張ろうという雰囲気にならない」。
ある3年生の担任をしていた先生は、こんなことを話してくれました。
「最初は『思いやりのあるクラス』という目標を私が決めたんです。でも、子どもたちは『思いやりって何?』『どうすればいいの?』と戸惑うばかりでした」。
従来の「上から下へ」の限界
多くの学校現場では、まだまだ「先生が目標を決めて、子どもたちに伝える」というスタイルが主流です。
しかし、これでは子どもたちにとって目標は「やらされるもの」になってしまいます。
特に小学校では、学年が上がるにつれて子どもたちの自主性や主体性が育ってきます。
低学年では先生の言葉をそのまま受け入れてくれた子どもたちも、中学年、高学年になると「なぜその目標なの?」「自分たちの意見は?」という気持ちを持つようになります。
共創がもたらす効果
子どもたちと一緒に目標をつくることで、3つの大きな効果が生まれます。
まず、目標への愛着が格段に高まります。
次に、目標の意味を子どもたち自身が理解しているため、具体的な行動につながりやすくなります。
そして、クラス全体の結束感が強まり、「みんなで頑張ろう」という雰囲気が自然に生まれるのです。
3.Example:小学校での具体的な実践方法と事例
ステップ1:子どもたちの本音を引き出す「困りごと探し」
4月の2週目頃、まずは子どもたちに「今、学校生活で困っていることや不安なこと」を聞いてみましょう。
小学生は素直に本音を話してくれます。
「友だちと仲良くできるか心配」「勉強についていけるかな」「給食を残しちゃうかも」「発表するのが恥ずかしい」。
こうした率直な気持ちこそが、学級目標の土台になります。
わたしが関わったクラスでは、「トイレに一人で行くのがいや」という声が多く出ました。
先生は最初驚きましたが、「みんなで一緒に行こう」「困った時は助け合おう」という目標につながっていったのです。
ステップ2:「どんなクラスになりたい?」で理想を共有
困りごとを出した後は、「じゃあ、どんなクラスになったらいいかな?」と問いかけます。
この時、先生は子どもたちの言葉をそのまま大切にしてください。
5年生のあるクラスでの実際の声です。 「失敗しても笑われないクラス」 「みんなが活躍できるクラス」
「面白くて、でもちゃんと勉強するクラス」 「新しい友だちができるクラス」
大人から見ると「もう少し高い目標を」と思うかもしれません。
でも、子どもたちの等身大の願いこそが、本当に大切にすべき目標なのです。
ステップ3:キーワードを見つけて、みんなで言葉にする
子どもたちから出た意見を黒板に書き出し、共通するキーワードを見つけていきます。
この作業も子どもたちと一緒に行います。
「助け合う」「楽しい」「挑戦」「仲良し」「頑張る」。
こうしたキーワードが見えてきたら、「この中で、みんなが一番大切にしたいのはどれかな?」と問いかけます。
小学生は多数決が大好きです。でも、ここでは多数決ではなく、「みんなが納得できる言葉」を探すことが大切です。
「このキーワードを聞いて、反対の人はいる?」「みんなが『うん、そうだね』と思える?」という聞き方をしてみてください。
ステップ4:子どもたちの言葉で目標を完成させる
最終的な目標づくりでは、できるだけ子どもたちが使った言葉を活かします。
大人が使う堅い表現ではなく、その学年の子どもたちらしい表現を大切にしてください。
1年生:「にこにこ たすけあい みんなで がんばる 1ねん1くみ」
3年生:「失敗をおそれず、みんなでチャレンジする元気なクラス」
6年生:「一人ひとりが主役になれる、最高の思い出をつくるクラス」
どの目標も、先生が一人で考えたものとは明らかに違う温かさと具体性があります。
実際の変化:ある4年生クラスの事例
わたしがコーチングで関わった4年生の担任の先生からの報告です。
最初は「元気で明るいクラス」という目標を先生が決めていました。
しかし、子どもたちの反応は薄く、目標を意識した行動も見られませんでした。
そこで、5月に子どもたちと一緒に目標を作り直しました。
話し合いの中で出てきたのは「一人ぼっちをつくらない」「みんなの『好き』を大切にする」という言葉でした。
最終的に決まった目標は「一人ひとりのすきなことを みんなで応援する 4年2組」。この目標ができてから、休み時間の過ごし方が変わりました。
サッカーが苦手な子も一緒に遊べるルールを考えたり、絵が得意な子の作品をみんなで見に行ったり。
3学期の学級通信で、その先生はこう書いています。
「子どもたちが自分たちで決めた目標だからこそ、誰に言われるでもなく、自然と目標を思い出し、行動してくれています」。
低学年での工夫:絵と言葉の組み合わせ
1年生や2年生では、まだ抽象的な言葉の理解が難しい場合があります。
そんな時は、絵を活用してみてください。
「どんなクラスになりたい?」の問いかけに対して、子どもたちに絵を描いてもらうのです。
「みんなが手をつないでいる絵」「みんなが笑っている絵」「一緒に勉強している絵」。
こうした絵から、目標につながるキーワードを見つけることができます。
高学年での発展:具体的な行動計画まで
5年生や6年生になると、目標だけでなく「そのために何をするか」まで一緒に考えることができます。
「一人ひとりが輝くクラス」という目標を立てた6年生のクラスでは、子どもたちから「月に一回、みんなの頑張りを発表する時間をつくろう」「困っている人がいたら、必ず声をかけよう」といった具体的なアイデアが出ました。
4.Point:子どもと共につくる目標こそが生きた目標になる
学級目標づくりは、先生の力量を示すものではありません。
子どもたちと一緒に、その学級らしい目標を見つけていく共同作業です。
完璧な目標である必要はありません。
子どもたちが「自分たちで決めた」と感じられる目標、「この目標なら頑張れる」と思える目標こそが、一年間を支える力になります。
小学校という段階では、特に「みんなで決める」というプロセス自体が、子どもたちにとって大きな学びとなります。
民主的な話し合いの経験、異なる意見を聞く経験、合意形成の経験。
これらすべてが、子どもたちの成長につながっていくのです。
明日からでも始められます。「今度の学級会で、みんなでクラスの目標を考えてみない?」その一言から、きっと素敵な変化が始まるはずです。
まとめ:学級目標はメンバーみんなで創り,育てていく
学級目標は、先生が一人で背負うものではなく、子どもたちと一緒に育てていくものです。
完璧である必要はありません。
大切なのは、子どもたちが「自分たちの目標」だと感じられることです。
今日から少しずつ、子どもたちの声に耳を傾けてみてください。
きっと、あなたが思っている以上に素敵なアイデアや思いを持っているはずです。
一緒に歩んでいく中で、先生自身も多くのことを学び、成長していけることでしょう。