「3年目までが勝負─若手教師が乗り越えるべき『試練の時期』の過ごし方」

こんな気持ちになったこと、ありませんか?

・毎日が精一杯で、このまま続けられるか不安
・先輩教師と比べて、自分だけがうまくいっていない気がする
・理想の教師像と現実の自分との差に落ち込む
・「向いていないのかも」と転職を考えてしまう

若手の先生方からこうした声を聞くたび、わたしは自分の新任時代を思い出します。
あの頃のわたしも、毎晩「明日、学校に行きたくない」と思いながら布団に入っていました。

実は、多くの若手教師が経験するこうした困難には、ある共通したパターンがあります。

わたしが20年間学校現場にいて、その後10年間教員養成に携わる中で見えてきたのは、「3年目までの試練の時期」を理解し、適切に乗り越えることの重要性でした。

今日は、若手教師が必ず通る道である「試練の時期」について、その特徴と具体的な乗り越え方をお伝えします。
この時期を「成長のステップ」として捉え直すことで、不安な気持ちが「今、自分は成長している最中なんだ」という前向きな実感に変わっていくでしょう。

一人で抱え込まず、一緒にこの道を歩んでいきませんか。

1.Point:若手教師の3年間は「成長の階段」─各段階を理解すれば乗り越えられる

若手教師が感じる不安や困難は、決してあなただけの問題ではありません。
実は、ほぼすべての教師が通る「成長の階段」があり、その段階を理解することで乗り越えることができます。

1年目は「現実との出会い」の時期
2年目は「深い悩みと模索」の時期
3年目は「自分らしさの発見」の時期

これらの段階にはそれぞれ特有の課題がありますが、同時にそれぞれに成長のチャンスが隠れています。

大切なのは、今自分がどの段階にいるかを知り、その時期に応じた向き合い方をすることです。

「このまま続けられるか」という不安は、実は成長している証拠でもあります。
一緒に、この3年間を乗り越える具体的な方法を見つけていきましょう。

2.Reason:なぜ3年目までが「試練の時期」なのか

教師という職業は、他の多くの職業とは異なる特殊性があります。
4月から突然、30人以上の子どもたちの前に一人で立ち、授業から生活指導、保護者対応まで、すべてを担わなければなりません。

わたしがこれまでカウンセリングやコーチングで関わってきた多くの若手教師から聞いた声があります。
「大学では教育理論は学んだけれど、実際の教室は想像以上に複雑だった」
「一人ひとりの子どもが違うのに、どう対応していいかわからない」
「先輩教師は簡単そうにやっているのに、自分だけがうまくいかない」。

実際、あるNPO法人が調査したところ,先生の6割は「3年以内の離職・転職」を考えている」というデータがあります。
しかし、これは決してネガティブなデータではありません。
むしろ、多くの教師が同じような困難を経験しながらも、その後立派な教師として成長していることを示しています。

なぜ3年目までが重要なのか。それは、この期間に教師としての基本的な土台が形成されるからです。

1年目で「現実を知り」、
2年目で「深く悩み」、
3年目で「自分なりの答えを見つける」。

この過程を経て、4年目以降は安定した教師人生を歩むことができるのです。

長年学校現場にいたわたしの実感としても、3年目を乗り越えた教師は、その後大きく成長し続けています。

逆に、この時期に適切なサポートを受けられず孤立してしまった教師は、残念ながら教職を離れることが多いのも事実です。
だからこそ、この時期の過ごし方が極めて重要なのです。

3.Example:各段階の特徴と具体的な乗り越え方

【1年目:現実との出会い期】

1年目の特徴は「理想と現実のギャップに驚く」ことです。
大学で学んだ教育理論と、実際の教室での出来事があまりにも違うことに戸惑います。

わたしがコーチングした新任のA先生は、「子どもたちが授業中に立ち歩いたり、話を聞かなかったりする現実に、どう対応していいかわからない」と涙ながらに話してくれました。
教育実習では見えなかった子どもたちの多様性に、毎日が驚きの連続だったのです。

この時期の乗り越え方は「完璧を求めない」ことです。
うまくいかないのは当たり前。
まずは「今日一日、大きな事故もなく過ごせた」ことを自分で認めてあげてください。
そして、小さな成功体験を積み重ねることです。
「今日は○○君が笑顔を見せてくれた」「△△さんが授業で手を挙げてくれた」。
そんな小さな変化に目を向けることで、教師としての喜びを感じることができます。

【2年目:深い悩みと模索期】

2年目は最も辛い時期かもしれません。
1年目の新鮮さは薄れ、周囲からも「2年目だから」という期待が高まります。

しかし、まだまだわからないことばかり。
「本当に自分は教師に向いているのか」という根本的な疑問が湧いてきます。

B先生は2年目の秋に「もう限界かもしれません」と相談に来られました。
保護者からのクレーム、学級経営の困難、同僚との人間関係。
すべてが重なって、心も体も疲れ切っていました。

この時期の乗り越え方は「一人で抱え込まない」ことです。先
輩教師に相談することは恥ずかしいことではありません。
むしろ、相談できることは教師としての重要な資質です。

また、同期の教師との情報交換も大切です。
「みんな同じような悩みを抱えているんだ」ということがわかるだけで、心が軽くなります。

そして、この時期だからこそ「自分の強みを見つける」ことも重要です。
授業が得意、子どもとの関係づくりが上手、保護者対応が丁寧。
どんな小さなことでも構いません。
自分なりの「得意」を見つけて伸ばしていくことで、自信につながります。

【3年目:自分らしさの発見期】

3年目になると、ようやく「自分なりの教師像」が見えてきます。
完璧ではないけれど、「これが自分の教師としてのスタイルかな」という感覚が芽生えてきます。

C先生は3年目の春に「やっと、子どもたちと自然に接することができるようになりました」と話してくれました。
1、2年目は「良い先生でなければ」という思いが強すぎて、かえって子どもたちとの距離があったそうです。
しかし、3年目になって「完璧でない自分も受け入れる」ことができ、子どもたちとの関係が劇的に改善したのです。

この時期の過ごし方は「自分らしさを大切にする」ことです。
他の先生と比較するのではなく、「自分にはこんな良さがある」「自分なりのやり方でも子どもたちは成長している」ということを認めることです。

また、この時期には「失敗からの学び」を意識的に積み重ねることも重要です。
うまくいかなかった授業や指導について、「なぜうまくいかなかったのか」「次はどうすればいいか」を具体的に考える習慣をつけることで、4年目以降の飛躍的な成長につながります。

4.Point:試練を乗り越えた先に見える教師としての充実感

3年目までの試練の時期を乗り越えた先には、教師としての本当の充実感が待っています。
それは、子どもたちの成長を心から喜べる瞬間、保護者から感謝の言葉をいただける瞬間、同僚との信頼関係の中で働ける充実感です。

大切なのは、今感じている不安や困難を「成長のプロセス」として受け入れることです。
完璧な教師など存在しません。わたしも50を過ぎた今でも、毎日が学びの連続です。

もしあなたが今、「このまま続けられるか」と不安に思っているなら、まずは「今、自分は成長の階段を上っている最中なんだ」と思ってみてください。
そして、一人で抱え込まず、周囲のサポートを求めることを恐れないでください。
あなたの成長を願っている人は、思っている以上にたくさんいます。

教師という職業は、確かに大変です。
しかし、子どもたちの未来を支える、社会にとって不可欠な尊い仕事でもあります。
今の困難を乗り越えた先に、きっとあなたらしい素晴らしい教師像が待っています。

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