子どもの"問題行動"の裏側にある3つのメッセージ

こんなこと、感じたことはありませんか?

  • 授業中に立ち歩く子どもに、何度注意しても改善されない
  • わざと友達を困らせるような行動を繰り返す子がいる
  • 突然キレて物を投げたり、暴言を吐いたりする場面に困惑する
  • 「なぜこんなことをするの?」と理解に苦しむ行動がある

毎日の教室で、子どもたちの「問題行動」に悩まされている先生方は少なくないでしょう。
注意しても直らない、叱っても繰り返す、時には保護者との関係まで難しくなってしまう。
そんな経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

わたしは20年間の学校現場と、その後の臨床心理士としての経験を通して、数多くの「問題行動」と向き合ってきました。
そして気づいたのは、子どもの問題行動は決して「悪意」や「わがまま」ではなく、心の奥底からの大切なメッセージだということです。

今回お伝えしたいのは、問題行動の裏側にある「3つのメッセージ」についてです。
子どもたちは言葉では表現できない想いを、行動を通して必死に伝えようとしています。

この記事を読むことで、目の前の問題行動がどんなメッセージなのかが見えてくるはずです。
そして、叱ったり注意したりする前に、まず子どもの心に寄り添う視点を持てるようになるでしょう。

子どもたちの行動の向こう側にある、本当の想いに耳を傾けてみませんか。

1. Point:問題行動は子どもからの3つのメッセージ

子どもの問題行動の裏側には、必ず心からのメッセージが隠されています。そのメッセージは大きく3つに分けることができます。

「わたしを見て」という注目欲求のメッセージ、
「わたしを守って」という安全欲求のメッセージ、
そして「わたしとつながって」という所属欲求のメッセージです。

これらのメッセージを理解することで、問題行動への対応は根本的に変わります。行動を止めることではなく、その背景にある子どもの心のニーズに応えることが、真の解決につながるのです。

2. Reason:なぜ子どもは行動でメッセージを伝えるのか

子どもの表現手段としての行動

大人は困ったとき、悲しいとき、寂しいときに言葉で表現することができます。
しかし、子どもたちは自分の気持ちを適切な言葉で表現する能力がまだ十分に発達していません。
特に複雑な感情や抽象的な概念については、言語化することが困難です。

そのため、子どもたちは自分の想いを「行動」で表現します。
これは決して意図的な選択ではなく、むしろ無意識的な心の動きです。
問題行動として見える行動も、実は子どもなりの精一杯のコミュニケーション手段なのです。

第1のメッセージ:「わたしを見て」(注目欲求)

人間の基本的な欲求の一つに「承認欲求」があります。子どもにとって、大人から注目され、認められることは生きていく上で不可欠です。
しかし、普通にしていても注目してもらえない環境にいる子どもは、問題行動を起こすことで注目を集めようとします。

授業中に大声を出す、友達にちょっかいを出す、わざと忘れ物をする。
これらの行動の背景には「先生、わたしのことを見て」「わたしがここにいることに気づいて」というメッセージが隠されています。

第2のメッセージ:「わたしを守って」(安全欲求)

子どもが攻撃的な行動を取るとき、多くの場合、それは自分を守るための防御反応です。
心理学では「闘争・逃走反応」と呼ばれるもので、脅威を感じたときに人間が本能的に示す反応です。

暴言を吐く、物を投げる、友達を突き飛ばす。
これらの行動の裏側には「わたしは怖い」「誰かわたしを守って」「これ以上傷つきたくない」というメッセージがあります。
攻撃的に見える行動ほど、実は深い不安や恐れを抱えていることが多いのです。

第3のメッセージ:「わたしとつながって」(所属欲求)

人間は社会的な生き物であり、どこかに所属し、誰かとつながっていたいという欲求を持っています。
しかし、適切なつながり方を学んでいない子どもは、問題行動を通してつながりを求めることがあります。

いじめのような行動、授業の妨害、集団からの逸脱。
これらの背景には「わたしも仲間に入れて」「わたしのことを分かって」「一人にしないで」というメッセージが込められていることがあります。

なぜこれらのメッセージが見過ごされるのか

教室という集団の場では、問題行動は「秩序を乱すもの」として捉えられがちです。
また、忙しい日常の中で、一つ一つの行動の背景まで考える余裕がないのも現実です。
さらに、問題行動に対して感情的に反応してしまうことで、子どもの本当のメッセージを聞き逃してしまうことも少なくありません。

しかし、これらのメッセージに気づくことができれば、問題行動への対応は大きく変わります。

3. Example:3つのメッセージを読み取る具体的な方法と実践例

第1のメッセージ「わたしを見て」への対応

実践例:小学3年生のA君の場合

A君は授業中に席を立ち歩き、友達の邪魔をすることが頻繁にありました。
最初は注意していましたが、改善されませんでした。
そこで担任の先生は視点を変えて、A君の行動パターンを観察してみました。

すると、A君の問題行動は「先生が他の子どもを褒めているとき」「自分の発言が取り上げられなかったとき」に多く起こることが分かりました。
これは明らかに「わたしを見て」のメッセージでした。

具体的な対応方法

担任の先生は、A君が問題行動を起こす前に、積極的に声をかけるようにしました。
「A君、今日の字がとてもきれいだね」「昨日の宿題、頑張って取り組んでいたね」など、小さなことでも認める言葉をかけました。

また、授業中にA君の良い行動を見つけたときは、すぐに「A君が静かに聞いてくれているから、みんなも集中できるね」と具体的に褒めました。

結果として、A君の立ち歩きは劇的に減り、授業への参加も積極的になりました。
「先生、見て見て!」と嬉しそうに作品を見せに来るようになったのです。

第2のメッセージ「わたしを守って」への対応

実践例:中学1年生のBさんの場合

Bさんは些細なことでキレて、クラスメートに暴言を吐くことがありました。
周りの生徒たちもBさんを避けるようになり、孤立が深まっていました。

カウンセリングを通して分かったのは、Bさんが小学校時代にいじめを受けた経験があり、「また傷つけられるのではないか」という不安を常に抱えていることでした。
暴言は、傷つく前に相手を遠ざける防御行動だったのです。

具体的な対応方法

担任の先生は、まずBさんが安心できる環境づくりに取り組みました。
クラス全体に「お互いを大切にする」というルールを明確にし、からかいや悪口を絶対に許さない雰囲気を作りました。

Bさんには個別に「何か嫌なことがあったら、いつでも先生に話してね」と伝え、実際に困ったことがあったときはすぐに対応しました。
また、Bさんの良いところを見つけて、クラスメートの前で紹介する機会も作りました。

時間はかかりましたが、Bさんは徐々に心を開くようになり、友達との関係も改善していきました。
「先生がいるから安心」と言ってくれたとき、とても嬉しかったと担任の先生は笑顔は忘れられません。

第3のメッセージ「わたしとつながって」への対応

実践例:小学5年生のC君の場合

C君は授業中に騒いだり、掃除をサボったりして、他の子どもたちから「迷惑な子」と思われていました。
しかし、よく観察すると、C君は一人でいることが多く、休み時間も一人で過ごしていることが分かりました。

問題行動は、実は「みんなの注意を引いて、何とかつながりたい」というメッセージだったのです。
ただし、つながり方が分からないため、結果的に孤立を深めてしまっていました。

具体的な対応方法

担任の先生は、C君が自然にクラスメートと関わりを持てる機会を意図的に作りました。
係活動では、C君の得意なことを活かせる役割を与え、他の子どもと協力する場面を設定しました。

また、C君の良いところを他の子どもたちに紹介し、「C君と一緒にいると楽しい」という体験を積み重ねました。
問題行動が起きたときも、叱るのではなく「みんなと一緒にいたかったんだね」と気持ちを受け止めました。

徐々にC君は適切な方法で友達と関わることを学び、問題行動は自然に減っていきました。
「今日は○○君と一緒に遊んだよ」と嬉しそうに報告してくれる姿が印象的だと担任の先生はいってました。

注意すべきポイント

ただし、メッセージを読み取る際に注意すべきことがあります。
それは、同じ行動でも子どもによって背景が異なるということです。
また、複数のメッセージが重なっている場合もあります。

大切なのは、目の前の子どもをよく観察し、その子なりのメッセージを理解しようとする姿勢です。
正解を急ぐのではなく、子どもとの関係を築きながら、少しずつ理解を深めていくことが重要です。

4. Point:メッセージを受け取ることで始まる真の支援

子どもの問題行動に隠された3つのメッセージ「わたしを見て」「わたしを守って」「わたしとつながって」を理解することで、支援の方向性は根本的に変わります。
行動を止めることから、心のニーズに応えることへ。叱ることから、支えることへ。

このような視点の転換により、子どもたちは「問題のある子」から「支援が必要な子」へと見え方が変わります。
そして、適切な支援を受けた子どもたちは、問題行動ではない方法で自分の気持ちを表現できるようになっていきます。

明日からの教室で、問題行動に出会ったとき、まず立ち止まって「この子は何を伝えようとしているのだろう」と考えてみてください。
その小さな視点の変化が、子どもとの関係を、そして子どもの未来を変えていくはずです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です